異動できない教員の絶望感「またこの学校で1年…」心の守る対策法vol.104

職員室の空気がざわつく中、校長室に呼ばれる同僚たち。一人、また一人と「異動の内示」を受けていく中で、自分の名前が呼ばれないまま時間が過ぎていく。

「まさか、来年もこの学校に残るの?」「あの失敗があったから、どこも私なんてほしくないんだ」。

目の前が真っ暗になるような感覚。希望を出していたのに異動が叶わなかった先生にとって、この時期は「春の訪れ」ではなく「出口のないトンネル」の入り口に感じるかもしれません。

元教員・元教頭の産業カウンセラー、坂梨禾森(さかなし かりん)です。
今日は、異動が叶わず「残留」が決まり、絶望感や自己否定に苦しんでいる先生へ向けて書きます。その苦しみは、決してあなた一人のわがままや能力不足のせいではありません。元管理職としての視点も交えながら、心を壊さずに新年度を迎えるための完全ガイドとして「心の守り方」をお話しします。

教員が「異動できない」と絶望する理由と心のメカニズム

「環境が変わらない」閉塞感が生む学習性無力感

教員にとって、学校という閉鎖的な空間に留まり続けることは想像以上のストレスです。苦手な同僚や管理職とまた顔を合わせなければならない恐怖や、生徒や保護者から貼られた「キャラ」のレッテルを剥がすチャンスがないこと。そして、新しい風が入らず前年度の踏襲が続く終わりの見えない業務量。これらが「あと1年続く」と確定した瞬間、心はポキリと折れてしまいます。

心理学ではこの状態を「学習性無力感(Learned Helplessness)」と呼びます。米国の心理学者マーティン・セリグマンが提唱した概念で、長期にわたって回避不可能なストレスや苦痛にさらされ続けると、「自分が何をしてもこの状況(環境)は変わらない」と学習してしまい、現状から逃れようとする自発的な行動や気力を失ってしまう心理状態を指します。あなたが今感じている「行きたくない」「何もしたくない」という感情は、甘えではなく、心が発している正常なSOSサインなのです。

「選ばれなかった」という思い込みと自己否定の正体

さらに、異動できない苦しみは「環境への不満」だけではありません。「選ばれなかった」「評価されなかった」という強烈な自己否定が伴うからです。「優秀な人は異動希望が通るはずだ」「問題があるから動かせなかったに違いない」「周りの先生も私のことを残り物だと思っているのではないか」。特に、過去に指導上のミスや学級経営でつまずいた経験がある先生ほど、この「認知の歪み(マイナス化思考)」の渦に飲み込まれがちです。人事という複雑な結果を、すべて「自分のダメさの証明」として受け取ってしまうと、明日学校へ行く気力さえ奪われてしまいます。

なぜ異動希望は通らない?元管理職が明かす教員人事の裏側と真実

能力不足ではなく「パズルのピース」という物理的事情

ここで、元教頭として少しだけ冷静な視点をお伝えします。あなたは「能力が低いから異動できなかった」「あの失敗があったからだ」と確信しているかもしれませんが、人事の事実はもっと複雑でドライです。管理職が人事を決める際、個人の能力だけでなく、校務分掌のパズル、教科のバランス、経験年数の組み合わせ、相手校の欠員状況など、あなたにはどうしようもない「物理的な事情」が複雑に絡み合います。管理職側は案外、あなたの過去の失敗と異動をリンクさせていないことも多いのです。

優秀だからこそ「残留」を命じられる!管理職の評価ポイント

むしろ、実際はその逆であることが多いのをご存知でしょうか。管理職が人事を組む際、どうしても動かせない「要(かなめ)」となる人材がいます。「この学年は、〇〇先生がいないと崩壊してしまう」「新しい若手を育てるには、〇〇先生の安定感が必要だ」「困難な保護者対応ができるのは、今の学校ではあなたしかいない」。残酷な言い方かもしれませんが、あなたが「優秀で、代えがきかない」からこそ、異動させられなかった可能性が高いのです。パズルのピースとして、どうしてもそこに必要だったのです。「能力が低いから無視された」という自己否定だけは、今すぐ捨ててください。

異動できず残留が決まって絶望した教員の「心の守り方」

「自責」を捨てて「教員としての価値」を再定義する

もし仮に、過去の指導力に何らかの課題があったとしても、それは「あなたという人間の価値」とは別問題です。「人事の結果=あなたの人間性や教師としての価値」ではありません。まずは、自分で自分に「不合格」のレッテルを貼る手を、そっと下ろしてください。同じ学校に残るということは、失敗の記憶が染み付いた場所でまた1年過ごすことを意味するため、どうしても自分を責めてしまいがちです。しかし、自信を失った先生が萎縮してビクビクしながら子どもたちの前に立つことこそが、新たな悪循環を生んでしまいます。。

「反省」はしても「自罰」はしない!感情の境界線の引き方

自責の念は百害あって一利なしです。
「あの時、あんな失敗さえしなければ」と過去を悔やんで自分を裁くのはやめましょう。「反省」はしても、「自罰」はしなくていいのです。ミスをした自分も、弱気な自分も、まずは「それでいい、人間だもの」と許してあげるところから、リスタートは始まります。人事の結果がどうであれ、あなたがこれまで子どもたちのために悩み、傷つきながら歩んできた事実は変わりません。

新年度を乗り越える「省エネモード」戦略|職場での関わり方を変える方法

目標を「成果」ではなく「心身の生存」に置く6割運転

物理的な環境(学校)は変えられませんでした。
ならば、あなたの心を守るために、新年度は「心理的な環境(関わり方)」を意識的に変えていきましょう。真面目な先生ほど、「今年も残るからには、去年以上に頑張らねば」と背負い込みますが、それは逆効果です。新年度の目標は「素晴らしい成果を出すこと」ではなく、「この1年、心身を壊さずに生き抜くこと」に絞りましょう。今年は「省エネモード」を自分に許可し、常に全力投球ではなく及第点を目指す「6割運転」を目標にしてください。「倒れないこと」が最大の貢献です。

苦手な同僚・管理職とは「事務的」に接して役割に徹する

人間関係が固定化する苦しさに対しては、「役割」に徹することが有効です。苦手な同僚や管理職とは、心のシャッターを下ろして事務的に接します。「この人は職場の隣人A」と割り切り、感情を交えない練習をしましょう。ドライな関係を構築することで、過剰なストレスから自分を守ることができます。

「いつでも辞められる」準備で心理的逃げ道を確保する

「またこの学校で1年」という閉塞感を打破するために、実際に辞めるかどうかは別として、転職サイトに登録したり、資格の勉強を始めたりしてみてください。「ここにしがみつかなくても生きていける」「いつでも辞められる」という選択肢(心理的逃げ道)を持つだけで、心の窒息感は驚くほど軽くなります。

異動できなかった教員のストレスを解消する相談先と対処法

同僚には言えない「残留の愚痴」を吐き出す重要性

残留が決まった先生の悩みは、実はとても孤独で、「恥ずかしさ」が伴います。異動していく先生には羨ましくて本音が言えず、同じように残留した先生同士でも「残れてよかったね」という空気に合わせなければなりません。「能力不足を認めることになる」と恐れ、同僚に愚痴を言うことさえできないのです。こうして行き場を失った感情は、澱(おり)のように心に溜まり、やがて限界を超えて心身を蝕みます。

利害関係のない第三者(専門家)を頼るメリット

だからこそ、心が折れる前に「学校とは全く関係のない利害関係のない第三者」を頼ってください。カウンセリングという守られた場所なら、「私はダメな教師です」「恥ずかしくて消えたい」といった本音や、組織への恨みつらみも、安心してさらけ出すことができます。元教頭である私なら、人事の理不尽さも、その中でのたうち回るような苦しさも痛いほど理解できます。私はもうあなたの評価者ではありません。あなたの痛みに寄り添う味方です。

教員の異動内示で絶望したあなたへ贈るメッセージ

「またこの学校で1年」 その事実は変わりませんが、その1年をどう過ごすか、あなたの心の持ちようまで組織に支配される必要はありません。まずは、ショックを受けているご自身の心をケアし、「よく耐えているね」と労ってあげてください。「自信がない」「学校に行くのが怖い」、そう思ってしまう自分を否定せずに受け止めてあげましょう。

もし、一人ではどうしようもない閉塞感に押しつぶされそうなら、いつでもお話ししに来てください。あなたが教師として、そして一人の人間として、もう一度顔を上げて歩き出せるよう、全力でサポートします。新年度が始まる前の今こそ、心のデトックスが必要です。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

▶参考:『お疲れ気味の先生へ』

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※人事発表直後はの緊急相談が増えがちです。
 少しでもお話ししたい方は、お早めにご予約ください。

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