目次
- 1 手術を決めた理由
- 2 術後の気持ち
- 3 自分の心と向き合う
- 4 日常生活への挑戦
- 5 老後への不安
- 6 自分を受け入れるまで
- 7 同じ経験をしているあなたへ
乳がんと診断され、
片胸を全摘し、再建はしないという決断をしました。
同じような経験をしている方やそのご家族に
少しでもお役に立てばと思い、
私の経験を書いてみます。
手術を決めた理由
がんと診断された当初から、
再発のリスクを下げるため、
全摘しようとは決めていました。
さらに、検査すると、
離れた2ヶ所に癌が見つかり、
部分切除では難しいだろうという話になり、
さらに全摘の決意を固めました。
また、
体力に自信がなかったことと
仕事への復帰も早くしたくて、
全摘して再建しない道を選びました。
再建しても、年を取ってから左右に差が出たりすることに
自分は耐えられないかなとも思いました。
この決断は、簡単ではなかったけれど、
自分の性格や価値観と向き合った結果の選択でした。
術後の気持ち
手術前に、片胸を全摘された方の写真を見て、
胸を切除した後には、
1本の傷跡が残るだけだと知りました。
そのときは、
「それなら耐えられる」と思い、
覚悟を決めました。
入院の前日、お風呂の中で、自分の胸に
「今までありがとう。病気にしちゃってごめんね」
とお別れをしました。
しかし、実際に手術を終えてみると、
片胸を失った喪失感は、想像以上でした。
麻酔から覚めた時、すぐ、
無意識に自分の胸に視線を落としました。
見事に片胸が無くなっていて、
胸にバンドがきつく巻かれていました。
私は、自分では気づかなかったのですが、
そのとき、震え出していました。
看護師さんがびっくりして医師に
「震えています!」と報告する声に、
はっと我に返りました。
さらに、全摘後は平らになると思い込んでいたのですが、
実際には、脂肪がない分、
真ん中が少し凹み、凸凹した形状になっていて、
それがショックでした。
その見た目を受け入れるには、時間がかかりました。
自分の心と向き合う
術後、私はカウンセリングについて学びを深めるようになりました。
そして、自分で自分をカウンセリングする方法を試してみました。
自分の心と対話し、
「辛いよね」「ショックだったよね」と
自分の気持ちを受け止めることを繰り返すことから始めました。
その成果があり、少しずつ気持ちが楽になり、
今の自分の体を受け入れ、
前向きな考え方を持てるようになりました。
しかし、
カウンセリングの学びを深めると、
やはりセルフケアだけでは不十分だなあと感じます。
第三者の視点、専門家の視点からサポートしてもらいながら、
しっかりと自分と向き合っておく方が、
早いし、確実だと感じます。
そのため、
私は、セルフケアで前向きにはなれましたが、
あらためてカウンセリングで
自分の喪失感や悲しみを聞いていただき、
さらに、気持ちの整理が進みました。
日常生活への挑戦
術後の体への負担って、思っていたより大きかったです。
考えてみると、
魚の半身を切り取って、
皮だけ戻して縫い付けたのと同じだなぁと
思います。(伝わりますかね?)
なんとも言えない違和感や、
動かしづらさ、動かすことへの怖さ、
時折感じる痛み、、、
私の場合、
違和感が取れ、
普通に動かせて、
気にならなくなるまで2年以上かかりました。
また、下着選びも意外と大変でした。
いろいろなブラジャーとパットを試しました。
「これいいな」と思っても、
使い続けていると不具合が出てきたり、、、
2年半経った頃、ようやく、
これ!というものに出会えました。
老後への不安
もう1つの辛かったのは、
老後のことを考えてしまったときでした。
年を取り、介護が必要になった時、
この体を見られる、、、
そう考えると、とても不安でした。
傷跡を見られることに、
私は耐えられるだろうか、、、と考えてしまったのです。
自分を受け入れるまで
私の場合、
手術から3年近く経った頃、
ようやく自分の新しい身体の状態に慣れ、
気持ちもすっかり前向きになりました。
老後も、必ず介護が必要になるわけではありません。
逆に、
「介護されなくてすむくらい、健康になろう!」と思い、
体を鍛え始めした。
先のことで不安になるより、
今の自分を大切にし、今を楽しもうと思っています。
同じ経験をしているあなたへ
この経験からわかったことは、
「時間薬=時間が助けてくれる」ということと
「心のケアにはカウンセリングが必要」ということ。
乳がんの術後、何かを失った時、
最初はとても辛いかもしれませんが、
少しずつ、気持ちは前を向いていきます。
自分にあった方法で
新しい自分、新しい状況を受け入れていください。
どんな大きな喪失感があっても、
私たち人間には、その先に進む力があります。
「乳がん体験記──胸を全摘して感じたこと、そして前向きになるまでvol.64」へのコメント
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